Dr.しゅん の しゅんじゅわークリニック

ようこそ、しゅんじゅわークリニックへ。Dr.しゅんです。標榜科はゲス科で、たまにおさわりを中心とした心療内科、精神科の治療も行っております。ゲス具合が酷くて心身の健康が損なわれている方への暖かい援助をしていきたいと思っております。喉が痛い?そういうのはちょっとよく分からないですね。 twitterやってます。@Drshunshu

症例6 Peing 質問者Cさん -会話の成立しない夫についてー その①

 

こんにちは、Dr.しゅんです。

 

次の質問です。

お困り系の質問は早めに返信していきましょう。

 

 

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これは前回の質問者Bさんと同じなのか…同じ気がしますけど…どうでしょうか?

ツイートではまずは自閉症スペクトラムを調べて当てはまるか検討してみてください、と答えました。

自閉症スペクトラム(以下ASD)はDSM-5というアメリカの精神疾患・障害の分類マニュアルでは以下のA~Dを満たすものと定義されています。

 

 

 

A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害
1.社会的・情緒的な相互関係の障害 
2.他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーションの障害。
3.年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害

B:限定された反復する様式の行動、興味、活動
1.常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方
2.同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン
3.集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある
4.感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心

C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。 

D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。

 

 

まあ簡単に言えば 空気が読めない人 ですね。アスペルガー障害とか高機能自閉症とか色々呼ばれていたものをまとめてASDと呼ぶことになりました。これは一つの概念で説明できるというか、すべきものだと思うのでいい変化だと思います。

空気を読むというのは実はなかなか高等な能力でして…子どもは大人より苦手ですよね、忖度的なのは。場の空気を読んで「ここは泣き止んだ方がよさそうだ…」とか思って泣き止むとかね。

 

 

これは知能と一緒で徐々に発達していく能力なんです。知能言語化できる情報処理の能力』、そして情緒言語化できない情報処理の能力』と捉えることができます。ここ大事!!そして一般的に情緒的な能力は女性の方が高いです。

 

 

これがどちらも同じくらいのスピードで平均近くまで発達していくのがいわゆる『定型発達』の人たちですが、情緒の発達が上手く進まない人ASDと呼んでいると理解してもらうといいと思います。

 

そしてDSM-5になってスペクトラムという単語が新たに入ってるんですが、これはその程度には幅があるよ、という意味でして、ASD特性は軽い人から重い人までいて0か100かではないよ、みんな多少なりともその要素は持ってるんだよ、ということです。

スペクトラムという扱いになることで病名(病気ではないんですが便宜上ね)への抵抗が少しでも和らぐ、という効果もあると思います。

自閉症という単語のイメージから受け入れたくない、特に自分の子どもはそんな病気なんかじゃない!という気持ちからASDを薄々感じながらも支援を受けない家族は多くいます。そこで「病気じゃないし、みんな持ってる特性なんだよ」と捉えることで少しでも心理的抵抗が和らぐといいなと思います。

否定して見ないふりをしても特性は実際にあるわけですし困っていることが解決することはないので、必要な支援はぜひ受けて、本人の生活上の苦痛を和らげて欲しいですね。

 

 

 

ASDの人は表情から気持ちを汲むとか、言葉の真意とか行間を読むことが苦手ですし、自身の感情表出も独特です。一般的に人は ”自分だったらどう感じるか” で善悪を判断するので、会話は最低限の情報伝達でよいと思っている人に「じっくり話を聞いてほしい気持ちくらい分かるでしょ?」と言っても(実感としては)分かりません。そういった人たちは会話がなくても本当に困らないし苦痛でもないんですから。

 

とある夫婦は奥さんが「子どもを見ててね」と言ったら旦那さんは子どもが転んでケガするのを言われた通りじっと眺めていて、旦那さんとしては『え、言われた通り見てたけど何がいけないの…?』と困惑していました。

旦那さんは知能は正常なので転ぶ予測ができていないわけではなくて、恐らく『転んでも死にはしないから手を出す必要はない』という判断をした上での静観だったと思われますが、奥さんからしてみたら何一つ任せられない!!ということになって夫婦間の仲は険悪になってしまいます。

 

これはもう熱意とか常識ではなくて能力の問題なので、奥さん側も「普通考えたら分かるだろ!」というのは旦那さんからしたら正直ムチャな要求でして…数学が苦手でどこが分かってないかも分からない女性にともかく自分で考えてみろという男性みたいなもので、もうその度に正解を教えて半ば暗記で数学を解けるようになるように育てるしかありません…。

 

言語化されれば理解することは可能なので、「話しかけられたらとりあえず『うん』と返事をする」など少しずつ共有するルールを作っていくことが必要です。

そんなところから?と思うかもですが、がっつりASDの人は「辛そうにしていたら労わった方がよい」とか言われてもどんな時が辛いの?、労わるってどうするの?(´_ゝ`)ってレベルですからね、言語化しない限り伝わらないので、少しでも曖昧なルールは結局適応できません。プログラミングだと思ってもらうといいかな…。

 

ASDに関してはAQテストという簡易検査があるんですが、現在は診療報酬に反映されるためか公開されておらず、病院を受診しないと受けることができません

AQテストをせずとも参考になる本がたくさんありますので、一度本を読んでみるとその特徴や周囲の対応なども書いてあります。

 

自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』↓

ネット中毒、オタクになる原因はこれ? 「生きづらさ」の正体とは | ダ・ヴィンチニュース

 

著者の本田秀夫先生は発達障害に関して有名な精神科医ですし、これは内容も妥当だと思います。ネットもそうですが、書籍でも中にはこれは電波系かな?というものも含まれてますので、必ず自分で目を通して医学的妥当性を保てているものだけを勧めています…。

 

 長くなりましたので後半に続きます。