症例6 Peing 質問者Cさん -会話の成立しない夫についてー その②
前回の続きです。
その①ではASD(自閉症スペクトラム)について解説しました。
これも前回もお伝えしましたが、基本的にメンタル系で困っていることはとりあえず病院に相談はアリです。その際に病気であるかどうかは関係なく、その判断も含めて病院に相談するのは解決の糸口になる可能性はあります。もちろん受診した上でどうしようもない…ということもありますが、少なくとも医学的に改善の余地があるかどうかは分かるでしょう。
その際はまずは受診前に電話で「~~といった相談をしたいのだけどそちらで対応してもらえますか?」と聞いてもらうとよりよいです。設備や専門性の問題でそこでは対応できないこともありますが、それなりに親切であればどういった医療機関が適切かなど教えてくれるかと思います。
ただ一つ心配ではあるのが、医師は疾患や薬のことは勉強しても、生活改善のための適切な支援の方法については医学部のカリキュラムでは学んでいないということです。
例えばアメリカでは精神科医になるに際して標準的な面接法などを学ぶ機会があるようなのですが、日本では特にそういったものを全員が学ぶ機会はありません。ほぼ個人の能力・独学に委ねられていると言っていい状態です。
それに認知療法や生活支援といったものはどうしても診察時間を食うので忙しい先生には敬遠されることもあります。なので医師がそもそも「適切な支援ができるか」という問題と、更にできたとして「それをしてくれるか」という問題があります。
先生も外来でこの辺の治療や話をすると平気で診察が1時間を超えてくるので…正直他へ仕事へのしわ寄せはかなり大きいです。
今は医療費削減の波で病院経営も楽ではなくなってきているので、どの病院も生き残りをかけてしのぎを削っています。例えばカウンセリングは診療報酬の設定がないので、自費にしているところ以外はタダでやってるようなものです。そんな状態ですので対価に合わないものにエネルギーを割く余裕はない病院・先生方の気持ちも分かります。
精神科は身体科と違って標準化が難しいのでガイドラインのようにこれが正解!みたいなのがないに等しくて、また医師ー患者間の相性・信頼関係も身体科より重要になります。
外科であれば人間的な相性は最悪でも手術が上手ければいい医師と言えるでしょうが、精神科で相性が最悪だったら信頼関係の構築はまあ無理ですよね…。
要するに精神科は能力的にも相性的にも医師の当たり外れが大きいのです。人当たりが良くて勉強熱心な先生は診察時間も長くなるし、かかりつけの患者も増えてますます予約も時間も取れなくなるし…とその辺の難しさがあります。
なので一回かかった病院が合わなかった可能性もあるので、別の病院に行くと解決の糸口が見えることもあります。
正直自分が患者でもこの先生には診てほしくないなあ…と思う精神科医もぼちぼちいます…。仕方ないけど標準化が難しい精神医学の分野はほんと無法地帯なので…レベルはピンキリです。
ただ厳しいことを言う先生が悪いとも限らなくてですね…ほんとここは難しいです。
なのでもし本当に迷ったときには一回病院に相談してみてください。そして自分でも勉強してみて、疑問があれば医師にぶつけてみてください。ちゃんとした先生なら(その時の忙しさにもよりますが)きちんと返してくれるはずです。そこで「患者が質問するんじゃない」みたいな態度の医師はヤブで良いと思いますし、それでも納得できないなら他の医師にも意見を聞いてみてください。
正直これは精神科医サイドとしては負担が増えるので苦しいところなんですが、やっぱり治療というか支援がハマった時は大きく改善するので、頑張りどころかなとも思うんですよね。
という今回もとてもまっとうな話でした。先生の外来は忙しいので説明はちゃんとしますがおっぱいくらいは触らせてもらいます。